総合商社・日記=総合商社の三菱商事/三井物産/伊藤忠商事/住友商事/丸紅/豊田通商/双日の研究=

shoshaman.exblog.jp
ブログトップ
2006年 05月 27日

なぜ大手総合商社はいすゞに群がるのか

(2006/07/28)

双日など総合商社3社が、いすゞ優先株を取得。これにより、実質的に商社5社がいすゞに出資する異例の体制となる。米ゼネラル・モーターズ(GM)と日産自動車の日米をまたぐ、大型提携の行方に世間の耳目が集まっている。だがほかにも、戦略的パートナーを求めてさまよう国内メーカーがある。トラック大手のいすゞ自動車だ。

「いくら何でも、5社が群がるのはいかがなものか」。外資系投資ファンドの幹部は目を丸くする。というのも、双日、丸紅、住友商事の総合商社3社が7月、いすゞが過去に発行した優先株を取得。いすゞにはすでに、三菱商事(出資比率3・7%)と伊藤忠商事(同4・2%)が大株主として名を連ねるため、実に商社5社が、同社へ実質的に出資する異例の展開になっているのだ。

<商社の狙う果実>
そもそものきっかけは、筆頭株主であったGMの経営不振である。

いすゞにとって厄介な経営問題が、上限転換価格54円との破格の条件がつく「第Ⅰ種優先株」。転換開始時期がこの10月に迫る。すべて普通株に転換された場合、発行済み株式数の約33%に相当するため、株価下落リスクをはらんでいる。そこで、優先株のままの保有を期待し、2004年10月ごろからGMに引き受けを要請してきた。が、リストラを加速するGMは今年4月、保有するいすゞ株をすべて売却。優先株引き受けの話は吹き飛んだ。

そして今回、救世主として現れたのが、日本政策投資銀行だ。事業パートナーから出資を募る「いすゞパートナーズ・ファンド」を組成し、第Ⅰ種優先株の一部をUBS証券から取得。双日ら商社3社は他の9社とともに、この投資ファンドを通じて優先株を買い取った。

双日の出資額は時価50億円。双日が取得した優先株を普通株に転換すると、発行済み株式数の1%弱に当たる。丸紅、住友商事の2社は50億円を下回る出資と見られる。このスキームによる、いすゞのメリットは少なくない。第Ⅰ種優先株の一部をまとめて処理でき、しかも取得先は願ってもない相手。双日はロシア、住友商事はインド、丸紅はイランなど海外で協業関係を築いており、優先株のままでの保有を期待できる。出資側の利点も大きい。ファンドを通しているため、個別交渉よりも割安で購入できるという。そのうえ、いすゞとの事業拡大を狙える。

商社には、いすゞとのビジネスが「おいしい果実」と映る。実際、いすゞには提携による成功例がある。タイでの三菱商事との協業関係だ。三菱商事は現地で、車両組み立てから、輸出、販売金融までの機能を担う。三菱商事の輸入、販売タイ法人の利益は年間100億円に及ぶ。

とはいえ、いすゞには経営課題が残る。極度の販売不振から、02年度に純利益が約1443億円の赤字にまで落ち込んだが、排ガス規制特需を取り込み業績は回復。05年度は純利益約589億円を計上した。が、トラックの国内需要は06年度後半から減少するとの見方が多い。収益柱の国内販売が下降線をたどれば、海外事業への投資もままならない。商社の思惑どおりに進むとは限らないということだ。

第Ⅰ種優先株は約1億3000万株分を金融機関が保有したまま(普通株に転換した場合の株数)。2010年以降に転換が開始される第Ⅲ種(額面価格200億円)、第Ⅳ種優先株(額面価格200億円)も残る。出資比率引き上げを狙い、これらの一部を、商社5社のどこかが引き受ける可能性はあるだろう。

「いすゞは独立の経営を目指したい」。同社の井田義則社長はこう公言している。ただ実態は、複数の総合商社を戦略的パートナーとして据える体制に移行しつつある。世界規模での競争が激化する中、“船頭多き”体制で生き残れるのかが問われる。(『週刊東洋経済』7月29日号より)(書き手:梅咲恵司)

by shosha-man | 2006-05-27 13:13 | 商社業界


<< サハリン1の日本向けガス600...      インドへの道 商社の挑戦(9) >>