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2007年 01月 10日

モテモテ代替燃料 バイオエタノール

『食糧も燃料も担う』

ガソリン価格の高騰、地球温暖化の解決策として注目され始めた代替燃料「バイオエタノール」。安倍晋三首相の所信表明演説でもその利用促進が明言されるほどのモテモテぶりだ。もし新たな燃料の主役になれば、農家は食と産業を担うスター選手に。中東依存も一気に減る。演説通りいくのか。 (山川剛史)

北海道十勝平野。雄大な農地が広がり、小麦、ビート(テンサイ)の日本最大の生産地帯だ。ここが国産バイオエタノールの“発祥の地”になりそうだ。

帯広駅から車で十五分ほどの「とかち財団」産業振興センターでは、これまで牛などのえさになっていた規格外小麦などを使い、バイオエタノールを事業化する可能性を探っている。

「十勝では年間約二万七千トンの規格外小麦が確保でき、現在の技術でも一リットル約九十八円で生産できる。やや課題が残るものの、ビートも大量に生産している。すでに3%を混合したガソリン(E3ガソリン)で車を走らせたが、通常ガソリンとの差は感じない。寒い土地でも、ごく普通に使えることは実証済みです」

同センターの金森克仁事務局長は、これまでの研究成果を披露する。

農林水産省は今後五年間で全国数カ所に計五万キロリットルのプラントを整備する計画で、原料が豊かな十勝はその最有力候補だ。

■北海道や新潟 山形、沖縄も

こうした機運を、帯広市の隣町・芽室町でビートなどを栽培する野本忠治さん(66)は「無限に化石燃料を使う時代は終わった。農家が食糧も産業も担うことになるなんて、なかなか夢のあるいい話だ。もちろん買い取り価格は気になるところだけどね」と歓迎する。

原料は小麦やビート以外にもいろいろある。

全国農業協同組合連合会(全農)はバイオエタノール用に新潟県見附市などで多収穫品種のインディカ米の試験栽培を始め、まもなく初めての収穫を迎える。

同市の菊池武昭さん(58)は「米どころの新潟でも、減反に次ぐ減反でつらい思いをしてきた。バイオエタノールは地球も田んぼも救ってくれるかもしれない。農機は普通のがそのまま使えるし、栽培は休耕田も使える。挑戦したいという人はいくらでもいるよ」と強調する。

このほか山形県新庄市はソルガム(コーリャン)、沖縄・伊江島、宮古島ではアサヒビールなどが主体となってサトウキビ、堺市では建築廃材、岡山県真庭市では木材の端材と多様な試みを続ける。自動車メーカーのホンダまでもが稲わらなどからバイオエタノールを製造する技術を開発、量産化の道を探る。

燃料の使い手となる自動車は、「どのメーカー車もほとんど即使用が可能」(ホンダ)な状態。経済産業省は来年夏から石油業界と協力し、首都圏のスタンド約五十カ所でバイオエタノールを混ぜたガソリンの試験販売に乗り出す。

どの原料が主流となるかはまだ見えないが、生産、供給、利用の三者とも代替燃料への動きを強め、“夜明け前”の状況にあることだけは確かだ。

日本でこれだけバイオエタノールがもてはやされるのは、何といっても日本が一九九七年に議長国としてまとめた地球温暖化対策のための国際的取り決め「京都議定書」の存在が大きい。二〇〇八年から五年間で、日本はCO2(二酸化炭素)など温室効果ガスを九〇年比で6%削減する目標を持つ。その対策の一環で政府はバイオ燃料五十万キロリットルの導入目標を決定している。

■飼料業者と奪い合いも

安倍首相は二十九日の演説で「議定書目標達成計画を着実に推進」「自動車燃料にエタノールを利用するなどバイオマスの利用を加速化する」と宣言した。準備は万全なのだろうか。

まずは原料の調達。

国内で年間に販売されるガソリンの量は約六千三百万キロリットル。すべてE3ガソリンにすると、百八十九万キロリットルのバイオエタノールが必要という計算になる。

だが、農水省の試算では「いろいろな原料を合わせると約十万キロリットル分は原料を生産する潜在能力がある」(藤本潔環境政策課長)のだという。

ということは、多少の努力をしてもガソリン需要の5%、目標の20%しか用意できないということになる。しかも、この数字には砂糖や飼料に使われている分も含まれ、うまく調整しないと飼料メーカーなどとの奪い合いが起きる可能性もある。

■優遇税制は持ち越しへ

次は普及のカギを握る生産コスト。多くの消費者にとって、ガソリン代の行方は当然気になるところだ。

農水省のまとめでは、どの原料を使っても一リットル当たり九十-百円の幅に収まるという。バイオエタノールの国際価格(関税込みで約九十四円)とも何とか対抗できる水準だ。

問題は通常のガソリンとの比較だが、揮発油税(一リットル当たり四八・六円)がガソリン同様にかかると、エタノールは二十円以上も高くなる。混合ガソリンでも値上げ要因になる。

欧米ではバイオ燃料導入当初は税の優遇措置が取られているが、日本ではまだ何の方向性も出ていない。

それどころか、この問題は道路特定財源の一般財源化の行方と密接にからみ、小泉政権は中身の結論を先送りした。前出の藤本課長は「原油高の今を逃せば、バイオエタノールを導入する機会を永遠に失う」とイライラを募らせるが、一つの節目となる年末の税制改正では持ち越しの公算が大きい。

さらに、日本で認められているエタノールの混合率は3%だが、国際的には10%(E10)以上が常識。多様な混合率のブラジルでは100%もざらにある。自動車メーカー側は国際市場も見すえE10への緩和を求めているが、法整備に向けた議論はまだ途中段階だ。

「日本では政策のパーツがかみ合っていない」

マーケティング会社「富士経済」の船橋里美主任研究員は現状をこう嘆く。

基本的には現在の流れを歓迎し、日本のバイオエタノール市場は六年後には三百数十億円規模にまで急成長すると予測するが、「食糧と競合する形でバイオエタノールを導入するのは疑問。残さを利用する技術開発をもっと急ぐべきだ。川上から川下まで合意を得ないまま無理にバイオエタノール導入に踏み切ると、参入する農家や企業のリスク(危険度)を高めることになる」と懸念する。

最近、ブラジルでバイオエタノール事情を視察してきた神戸大学の西島章次副学長は「農場も工場も日本とは規模がまるで違う。補助金を出してまで国内調達にこだわる必要はなく、ブラジルからの輸入が現実的。国民負担を増やしてまでやるというのなら、もう何も言わない」とあきれ顔だ。

十勝の試みを先導する帯広畜産大学の西崎邦夫教授はこう訴える。「環境、エネルギー、食糧のどれを優先してもひずみは出るが、バイオエタノールをどうするのかは近い将来、必ず来る問題。国はどうバランスを取るのか、国家戦略として打ち出す責任がある」

<デスクメモ> バイオエタノールは二酸化炭素を吸収した植物から得られるため京都議定書の中で排ガスが削減すべき排出量にカウントされないありがたい燃料だ。心配なのは、このエタノールはお酒として飲むアルコールの純度を高めたものということ。誰ですか「車に飲ませるくらいならオレが飲む」と言っている人は!?(蒲)

by shosha-man | 2007-01-10 17:02 | その他・関連事項


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